2016年2月11日木曜日

「沈黙の数秒間」

あの時の白ちゃんの顔が忘れられません。
 
脱走時、マンションの3階廊下から隣の家の屋根に飛び降りる前
白ちゃんはフェンスの上で数秒間、じっと僕の顔を見つめていたんです。
その表情は今まで見せたことがないもので何か言いたげでした。
 
2日前、嫌がるのを無理やりキャリーに入れて病院へ行ったから
「白ちゃんを病院へ連れていって痛い思いをさせるお父やんは意地悪だ」
と怒っていたのかな。
 
それとも
「いつも『お仕事、お仕事。忙しい、忙しい』ばかり言って
白ちゃんと遊んでくれないお父やんなんて嫌い」
と訴えていたのかな。
 
どんなに嫌われていてもいい・・・。
これからもずっと白ちゃんと暮らしていきたかった。
 
でも、うちの中で一番甘えん坊だった白ちゃんが
そんなことを思っていたはずはありません。
 
窓越しではない空を見た瞬間、ちょっと散歩に出たくなったのかな。
 
もしそうならね、白ちゃん。
散歩からはちゃんと帰ってこないとダメでしょ。
いいかい、天国の散歩はそこそこにして早く戻ってくるんだよ。
早く生まれ変わって
またお父やんの娘になっておくれ。
 
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